宗像みあれ芸術祭

海を渡る神々とともに、アートで未来をつなぐ祭典

■ 公募作家審査に寄せて

審査員 アートディレクター・山出淳也氏【Yamaide Art Office 株式会社 代表取締役】

| 中林丈治 〜隠すことでわかること〜

ソリッドな彫刻で知られる中林氏による、それらとは対照的なリキッドなインスタレーションの提案にまず驚いた。
何かを包む行為は、そのモノの意味を露わにすることなのか、ユニークな形状を生むことなのか、もしくはマスクにも似た断絶をテーマにすることなのか。
おそらく創りださなければ、何なのか分からないこの新たな挑戦に注目している。

| 戸室太一 〜部分から全体を考える〜

物や事、場所の見え方、その意味は、見る人それぞれ、そして時々で変化していく。
複雑で将来が不確定と言われる現在、この傾向はますます加速度的に進んでいる。
同時に、それは広い視点や物事の全体像を捉えることをも促していく。
戸室氏の提案は、数人の盲人が象の一部だけを触って感想を語り合う、インド発祥の寓話「群盲象を評す(ぐんもうぞうをひょうす)」を思い出した。

| 橋本次郎 〜目に見えない大切なもの〜

以前知り合いのサウンドエンジニアから、耳を澄ますことに集中すると、目で見るよりも何倍も深くその場所を経験することができると聞いた。
フィールドレコーディングによる作品制作を続ける橋本氏の新作は、ここ宗像のサウンドスケープ。
きっとそれは、この神秘な場所と出会う特別な経験になることだろう。

| 渋田薫 〜自由な色は美しい未来を創る〜

楽譜のようだ、と渋田氏の提案を一目見てそう思った。
色があたかも意思を持ち、のびのびと飛び回っていて、その喜びや自由さに魅力を感じた。
色を音符のように扱おうとしたカタルーニャの画家ジョアン・ミロは、生前こんな言葉を残している。
「芸術において最も重要なことは、作品そのものではなく、どのような種を蒔けるかだ」。
多様な可能性がここから世界に向けて放たれ、受け取った一人一人の心の中で花が咲く。
そんな美しい瞬間に立ち会いたい。
そういえば、サグラダファミリアの主任彫刻家の外尾悦郎さんも福岡県出身だった。